よく外来で受ける質問に「耳あかはどのようにしてとるのがいいのですか?」
あるいは「どこまでとったらよいのですか?」というものがあります。
私のところでは手術用の顕微鏡下で、やはり手術に使う器具等を用いるほか、耳垢を溶かす薬を使って洗い流すようにしてとる場合もあります。とはいえ、自宅でということになるとなかなか一概には答えにくいものです。
基本的には、見える範囲で綿棒か耳かきを使ってとって頂くように答えますが、耳の穴の大きさ、曲がり具合、耳垢の性質、外耳道湿疹などの疾患の有無によって使う器具も取り方も変わってくるということもあるからです。
ただし、耳掃除をする前に、飛びかかってきそうなペットや子供が近くにいないことを十分に確認してください。
耳掃除中に子供がぶつかってきて鼓膜に穴があいたという患者さんは意外と多いものです。
また耳垢には耳の穴を細菌から守る働きもありますので、過度に耳掃除をすることはかえって外耳炎などの原因になってしまうこともあります。
耳垢には乾燥してかさかさのものと(写真1)、ネコ耳とかアメ耳と称される柔らかいタイプのもの(写真2)があります。
この耳垢が柔らかいタイプは日本人の10~20%に認められるとされていますが、このタイプで綿棒を使うとかえって耳垢を奥の方へ押し込んでしまうことがあります。
耳垢が少なければ細めの綿棒でぬぐうようにとるか、ふつうの耳かきでとるのがいいと思います。
なかなか売っていませんが、先端部にワイヤーを丸めたようになった物をつけた物があり、これは有効かもしれません。
いずれにしても量が多くなると詰まってしまって奥に押し込んでしまう可能性があります(写真3)。
最近耳の奥が見えやすいように光る耳かきや吸引する耳掃除機なども出ています。
耳かきの先端が光るタイプのみみかきは奥の方が見えやすいのですが、少し太めのものが多く、また奥の方までかきすぎてしまう危険があります。
吸引式のものは粉のようになった耳垢をとるのにはいいのですが、それ以外ではあまり役立たないように思います。
耳がかゆくなって耳掃除をやめられないような場合は、外耳道に湿疹ができている可能性がありますので必ず耳鼻科のお医者さんの指示に従ってください。
また、乳児で入浴後に、においがする耳漏が出ると言って受診される場合があります。
多くは胎脂が溶けて出たものですが、中耳炎の場合もありますから専門医の診察を受けるのが無難です。
耳垢栓塞といって、耳垢で耳の穴が詰まってしまうことがあります。このような場合、繰り返すことが多いようで、なかなか家庭でとるのは難しいので定期的に掃除をしてもらうのがいいでしょう。
耳の中はなかなか見えるものではなく、所見によっては私でも判断が付きかねるときがあります。
そのような場合は内視鏡や手術用顕微鏡で観察をしたのちに診断をします。
たとえ耳垢でも、こんなことぐらいでとは思わずに相談してください。