どうしたわけか、夜中とか保育園に行っているときのように一番困る時間に子供の耳は急に痛くなるものです。こんな時はまず急性中耳炎が考えられます。急性中耳炎は1~4歳くらいに多く見られますが、特に保育園や幼稚園などで集団生活をするようになると、繰り返すことが多くなります。
もちろん風邪等をきっかけに大人でも起きることがあります。もともと耳と鼻は耳管という管でつながっていてその間を空気が行き来しています。これを経由して鼻の側から細菌が中耳(鼓膜の奥)に入って炎症を起こしたのが急性中耳炎です。
そのため、耳管の働きが悪かったり、鼻のかみかたが上手にいいかなかったり、飛行機に乗ったときのように急激な気圧の変動にさらされたときなどにも発症することがあります。
症状は耳の痛み、自閉感、発熱、耳漏などです。原因になる細菌は肺炎球菌、インフルエンザ桿菌などがありますが、これらはよく鼻の奥から検出される細菌です。中耳炎の程度としては鼓膜が赤くなる程度のものから、鼓膜が腫れ上がってくるものまで様々です。(写真1~4)
治療は抗生物質の内服・点耳、鼓膜切開などを行いますが、困ったことに、近頃では抗生物質に抵抗性を持った細菌がよく見られるようになってきているのが問題になっています。特に1歳前で中耳炎になる場合や、保育園などに通っている1~2歳の子供は繰り返す場合が多くなります。これはお母さんからもらった免疫が生後6ヵ月くらいでなくなり、そこから自分で中耳炎を起こす細菌に対する免疫を獲得していく反応の個人差によるとされています。
従って抗生物質がききにくいときや繰り返すときには積極的な鼓膜切開をおこなって中耳にたまった分泌物を除去することが必要になります。さらに中耳炎をくりかえす場合は鼓膜にチューブを留置することもあります。(写真5)
鼓膜切開とは、鼓膜の表面を麻酔した後、耳の穴から鼓膜に小さな穴をあける処置です。耳に麻酔の薬を入れて10分程度おくとほぼ無痛の状態になるのですが、鼓膜に炎症があると麻酔の薬が効かないため、かわいそうですが動かないように押さえてできるだけ手早く切開しなくてはならないこともあります。
最近はほとんどすべての小児用内服抗生物質が効かない例が多くなっていて非常に治療に苦慮します。
そのような場合に限らず、できるだけ鼻水をとってきれいにする、切開後の耳漏が止まらない場合は局所処置を丹念に行うなど、基本的な処置が重要になってきているように感じます。
そのほかには保育所などでの1~2歳児の密度を広くとる、年長児との接触を少なくする、たばこの煙などにさらさないようにすることなどによりいくらか頻度を減らすことができるかもしれません。
以上が急性中耳炎の治療の概略ですが、夜や休日に急に耳を痛がった場合、とりあえずは痛み止め(小児用の熱冷ましの座薬など)を使ってみて、収まるようなら翌日に耳鼻科を受診してください。