滲出性中耳炎とは、小児に多く見られる耳の病気で、鼓膜の奥(中耳)に液体がたまった状態をいいます。
この液体は耳の穴から入ってものではなく、中耳の炎症によってしみ出てきたものです。多くの場合、急性中耳炎に引き続いて滲出性中耳炎が続くのですが、特にきっかけがあきらかではない場合もあります。
このような場合でも、急性中耳炎を過去に起こしていることが多いため、過去に起きた炎症が中耳内に残って滲出性中耳炎になるものと考えられます。
成人にも時々見られますが、やはり風邪や急性中耳炎、鼻の病気に引き続いてみられることが多く、薬で治る場合からチューブ留置をしても粘調の滲出液が排出されず、聞こえるようになるまでかなりの時間を要する場合まで様々です。
滲出性中耳炎は症状も軽微で自然治癒もあるのですが、中には癒着性中耳炎や手術が必要になる真珠腫性中耳炎に移行して手術が必要になる例もあります。また、急性中耳炎に引き続く場合でも滲出性中耳炎の状態で不十分な治療を行うと炎症が耳の奥にのこった状態が続くため急性中耳炎を繰り返しやすく、難治化することもあります。以上の理由で滲出性中耳炎は専門医による十分な治療が必要になるのです。
診断は鼓膜の観察と聴力検査によります。聴力検査では鼓膜の奥にたまった滲出液のため軽度の難聴を示します。また、鼓膜の動きが悪くなるのでこの動きを見るチンパノグラムという検査も有用です。最終的には鼓膜の所見による診断が必要になりますが、正常の鼓膜と紛らわしい場合もあるため、そのような場合は手術用の顕微鏡や耳用の内視鏡を用いて診断します(写真1,2,3,4,5)。
治療は薬物による治療をまず行い、効果がなければ鼓膜切開(写真6)や鼓膜チューブ留置(写真7)を行います。それでもなかなかよくならず、繰り返しながら治癒まで数年を要する場合もあります。症状が軽いといって放置せず根気よく治療をする必要があります。