最近の難聴に対する考え方として、高齢者の難聴は音刺激を通して脳に入る情報量が減ること、人との会話が減ってしまうことなどから認知機能の低下に影響を及ぼすことが知られています。
そこで補聴器の出番となりますが、実はそこにも限界があります。難聴の状態が長く続くと脳が音を聞かない状態になれてしまうため、補聴器を付けた時にうるさく感じること、さらに高齢者の場合、音は聞こえても脳が言葉を聞き分ける能力が低下している点です。
言葉を聞き分ける能力が低下しているというのは、たとえて言うとテレビの走査線が減ってしまっているようなものです。明るい暗いはわかっても画像はよくわかりませんね。高齢者の難聴で補聴器を考える場合、言葉の聞き取り検査を行って言葉を聞き分ける限界を把握して補聴器を装用したときにどれくらいの音量に設定すると一番聞こえがよくなるか判断して認定補聴器店のテクノエイドという補聴器調整の国家資格を持った担当者に情報提供をして、その後も補聴器があっているか検査を行います。
ちなみに補聴器相談医が情報提供書を作成した場合、補聴器は医療費控除の対象になります。
昔は、補聴器を使用する場合少しずつ慣らすという考え方でしたが、現在は少しうるさく感じる設定にして朝から昼までがんばって脳の働きを活性化させるように調整して、慣れてきたらまた調整を繰り返すという方法が標準になっています。脳のリハビリをしていると考えると分かっていただけるでしょうか。
この期間はおよそ3月間かかるとされており、特に初めの1月間が大事です。補聴器を付けてもうるさくて続けられないとすぐやめてしまう方がいます。特に短気な男性に多い傾向があります。また、家族はかなり困っているにもかかわらず本人は家でテレビを見ているだけだから必要ないといわれる方もいます。高齢になればなるほど、この傾向は多くなります。本人に意欲がないと脳のリハビリも難しくなってしまいますので通常の会話で不自由になってきたところが補聴器のつけ時ともいえるでしょう。そのように積極的な方は高齢になっても人との会話が可能で孤立することも少なくなります。また、補聴器は調整と本人の意欲が大切なのでご家族が通販や販売店で買ってきてつけさせようとしても現実には難しいことが多いです。うまく補聴器を使用して会話ができるような方は積極性もあり、年齢に比べて若々しい感じがします。
業者によっては売りっぱなしで、その後の調整をしないようなところもありますし、装用後も耳鼻科での経過観察が必要ですから、まずは補聴器相談医の資格を持っている耳鼻科を受診して相談をしてください。